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熱帯魚水槽の砂利

水槽内での底砂の役割

底床に敷く底砂は、見た目だけではなく非常に重要な意味を持ちます。

底砂は、水質に大きく関わり、水草にはもちろん魚にも影響を与えます。バクテリアによる生物ろ過のしくみに関わることから、もし砂を敷かないで、バクテリアの生きた自然界の営みを作り上げようとしたら、大変な工夫が必要になります。

底砂の役割には次のようなものがあります。

熱帯魚の生息環境に似せ、熱帯魚を落ち着かせる


水草はもちろん、底砂を入れて自然環境下に近付けることは、魚のストレスを軽減させることにも繋がります。

バクテリアの活性を促し、水をろ過する


底砂内にはバクテリアが住みつき、餌の食べかすや熱帯魚の糞などを分解しているのです。自然界においては、このバクテリアの作用により、ろ過装置がなくても汚れた水も自然に綺麗になっていきます。この自然界のしくみを水槽内でも利用するために、底砂を入れる必要があります。

砂の表面には、大量の濾過バクテリアが付着し、これが生物ろ過の中心となります。ですので、水槽の掃除をする際も、水道水で砂を洗わないようにします。水道水で洗うと、水道水に含まれる塩素によって、ろ過バクテリアが死んでしまします。砂を洗う時は、水槽の水を使ってゆすぐだけにします。

水質を変える効果がある


底砂にはさまざまな素材のものがあり、それによって、その性質も変わり、水質を変化させます。すなわち、水をアルカリ側に傾けるもの、水質を酸性側に傾けるもの、水質に影響を与えないもの、の3タイプに別れます。

ソイルは弱酸性に変える性質を持ちます。ですので、アマゾンのカラシンを飼育する水槽には向きと言えます。逆に大磯砂はアルカリ性に変える働きをします。ですので、グッピーやプラティなどの中性~弱アルカリ性を好む魚を飼育する水槽には向きと言えます。

美観に優れる

生き物のためだけに育てるのであれば、関係のないことですが、美しくレイアウトされた水草水槽を期待している場合も多いはずです。そうなって来ると、美観も意外と重要になって来ます。見た目の点でも、底砂は美観に優れます。最近は、さまざまな色の底砂が出回っています。自然の雰囲気を生かしたいのであれば、水草との相性のいい色を選ぶようにします。

一般的に、青などの人工的な色合いのものは、水草に合わないと言えます。水草が主であれば、底床は黒や茶、白など、自然の色合いにマッチするものを選ぶようにしたほうが無難です。白については、水草が際立って美しく見えますし、反射によって光量を稼ぐことができます。しかし、白い底砂は、コケや汚れが目立つというデメリットがあります。予めメンテナンスを覚悟して選ぶのであれば、白い底砂もいいと思います。

底砂を選ぶポイント

底砂は、目的に合わせて使い分ける必要があります。いったん水槽内に入れてしまうと、崩れたりして、きれいに取り換えるには、手間がかかる場合もあります。ですので、底砂を選ぶポイントを明確にして選んでいくようにしましょう。

水質の点でどうなのか?

底砂は、pHの上下やKH・GHの値に影響を与えます。水質にどう影響を与えるか、水質がどれくらい変わってくるかを考えて選ぶようにします。

KH(炭酸塩硬度)は、炭酸水素イオン(HCO3-)と結合しているカルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)の合計した量のことです。水中にカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)がたくさん存在すると、水中の二酸化炭素(CO2)と水(H2O)と反応して、炭酸水素イオン(HCO3-)が生じ、水をアルカリ性に傾けます。逆に炭酸カルシウムが存在しないと、たとえば魚の排泄物や餌の残りにより発生したアンモニア(NH3)は、水酸化イオン(OH-)と結びついて、アンモニア水(NH4OH)になるなど、水中には、水素イオン(H+)のが増えて、酸性に傾いていきます。

このように水中にカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)がたくさん存在すると(KHの値が大きいと)、水中の二酸化炭素(CO2)と水(H2O)と反応して、たくさんの炭酸水素イオン(HCO3-)が生じ、水はアルカリ性に傾きやすく、当然pHの値も大きくなります。逆に炭酸カルシウムが存在しないと(KH=0だと)、水は酸性に傾いていきます。

このようにKHの値が大きいと、水はアルカリ性に傾きやすいことになります。熱帯魚飼育の水槽におけるKHは、ほぼ「アルカリ度」と言い換えることもできます。(厳密に言えば、アルカリ度はアルカリ成分の量、硬度は水の中に溶けているカルシウムイオンとマグネシウムイオンの量で、同じではありません。)

底砂はその素材によりKHに関与し、水質のpHを変えていく働きをします。

水中にあるこうしたカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)は、KHで表される炭酸水素イオン(HCO3-)と結びつく(いわゆる)以外にも、塩素イオン(Cl-)と結びついたり、硝酸イオン(NO3-)などとも結びつきます。こうしたさまざまなイオンと結び付いたカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)の合計をGH(総硬度)として表しています。

GHとは、つまり水中に溶け込んでいるカルシウムやマグネシウムの濃度の総量を言います。わたしたちがよく使っている硬水・軟水というのはGHの差になります。単位はドイツ硬度「dh(⇒GH)」、アメリカ硬度「ppm」が使われます。軟水は、水中のマグネシウム塩やカルシウム塩の量が少ないことを意味します。アマゾン川は、弱酸性の軟水を示します。

メンテナンスの点でどうなのか?

底砂の素材とは別に、製法により、さまざまな粒の硬さ、大きさのものがあります。こうした粒の硬さ、大きさは、メンテナンスに影響します。粒があまり細かいものだったり、すぐに細かく砕けてしまうものだと、水換えの際などに水に舞い、水を濁すことになります。

水が白く濁ってしまっても、数時間後には濁りはとれて透明な水に戻るのが通常ですが、極端に目の細かい砂利は、底床掃除がしづらくなり、メンテナンスが面倒になることは確かです。水草の育生ということで底砂を考えるのであれば、粒径2~5mm程度で、ある程度の硬さを備えたものが、水草に適していると言えます。

ちなみに水槽の掃除の際に水が白く濁ってしまって、2~3日経っても透明な水に戻らず、水が濁っていたり、くすんだ感じのままである場合は、掃除によりバクテリアがダメージを受けてしまったことが考えられます。ろ過バクテリアが減少で生物ろ過が機能しなくなってしまうと、いくらろ過を行っても、物理ろ過では取りきれないアンモニアや亜硝酸などの物質が、いつまでも水槽内に残り、浮遊している状態になります。

水が濁ったままであるもう1つの原因には、ろ過能力が低いので、水槽内がうまく循環されずにいつまでも濁りがとれないことが考えられます。ろ過フィルターの追加やグレードアップを考える必要があります。

通気性はどうなのか?

底砂は、比重や粒の大きさによって、通気性が変わって来ます。水草の育成には、通水性に優れた底床の選択が必要になります。水草の育生には、やや比重が軽く、ある程度の硬さを備えたものが適していると言えます。目の荒い砂利では、水草の植栽が困難になり、根張りもスムーズにいきません。また、余りにも粒の細かいものだと、次第に底床が目詰まりを起こして、水草の生長もはかどりません。

また、底床が目詰まりを起こした状態では、その繁殖に酸素を必要とするバクテリアも活性化されません。水質の状態を良好に維持しやすくするためには、粒と粒の間に適度の隙間があり、若干の水の流れがあることが理想です。ちなみに、砂をあまり厚く敷き過ぎるのもよくありません。多くても5㎝くらいの厚さまでにして、敷くようにします。

底砂の種類と水質に対する影響

砂は、種類によって水を弱酸性に傾けたり、弱アルカリ性に傾けたりします。そのため飼育する熱帯魚の種類に合った水質を作り出す砂を用いる必要があります。

(1)水質をアルカリ性に傾ける底砂

大磯砂

大磯砂は、水槽飼育でもっともポピュラーなのが天然砂で、水質をアルカリ側に傾ける働きをします。元々は大磯海岸で採集される砂礫を指して、この名称で呼んでいましたが、大磯海岸における採取は禁止となりました。そこで、形状や色彩が似たようなフィリピン砂など、東南アジアから輸入される海産砂が、現在「大磯砂」の名で販売されています。

大磯砂ともとは大磯海岸で採取していたのでこの名前がついているが、サンゴ片や貝殻の欠片の混入があり、主に炭酸カルシウムを主成分としています。それらは、飼育水のKH濃度を上昇させ、二酸化炭素(CO2)や水と反応して、pHの上昇も引き起こし、水槽の水をアルカリ性に傾けます。いわゆる弱酸性のアマゾンの環境下で育つ水草の管理には完全に不向きです。

また、大磯砂以外にも、一部の人工底床で、pHを上昇させ、水をアルカリ性に傾けものもあります。

珊瑚砂

珊瑚砂は、珊瑚を砕いたものなので、表面がでこぼこしているため表面積が大きく、濾過能力の高い天然濾(ろ)材と言えます。水質をアルカリ性に変える働きがあります。珊瑚砂は淡水魚には不向きで、海水魚飼育などによく用いられます。淡水魚では、主にアフリカンシクリッドなどのアルカリ性を好む熱帯魚飼育などでろ材に用いることもあります。

珪砂

珪砂は、火成岩の風化による石英を主成分とした堆積物です。石英自体は水質に影響を与えないものですが、珪砂には石英以外にもカルシウムなどの不純物を含まれていることから、弱アルカリ性に傾ける傾向にあります。

(2)水質を酸性に傾ける底砂

ソイル系の底砂

ソイルと言われる底床のほとんどは、水質を弱酸性・軟水へ傾ける作用を持っています。これらは天然の土壌を適度な硬さに焼成したもので、その成分に有機酸を豊富に含み、その多くが水中の水酸イオンと結びつくことにより、pH・硬度(KH、GH)が低下します。

pH、硬度を低い値に引き込んでくれるので、水草の多くが弱酸性の軟水のアマゾン原産のため、そうした多くの水草の育生に適した底床になっています。これに合った育成の容易な水草を植えることにより、水草の浄化作用が働き、水質の安定にも繋がっていきます。また、それ自体に栄養分を含んでいる事も特徴の1つです。

さて、余りこの事には触れられていないのですが、ソイルの効能(pHの降下、軟水化)は、使用する水道水の水質に拠って、初めて選択の意味を持ちます。

日本の平均的な水道水は軟水ですが、若干の硬度物質(Ca、Mg)を含みます。多くの南米産水草は、これらの値が限りなく0に近い方がいいとされることも、ソイル系の底床が珍重される理由にもなっています。

井戸水を使う場合は、硬度が高い場合がありますので、テトラの液体試薬「総硬度試薬」(1,000円くらい)を市販の試験片等で水質を調べて、合わないようであれば水質調整材で調整してから使うようにします。

アクアソイル・アマゾニア

アクアソイル・アマゾニアは、ADA(アクアデザインアマノ)の販売する水草育成用の土で、原料の天然黒土に腐植酸を豊富に含み、他のものよりも土内に含まれる腐植酸が多いことから、土壌の有機成分が水草の生長に活力を与えます。最大の特徴として、セッティング当初に水質を大きく酸性に傾ける効果がありますので、南米産の熱帯魚などや水草にとっては住みやすい環境を作り上げてくれます。

一方において、アマゾニアの黄色の色素は、ソイル内に含まれる腐植酸がにじみ出てきているもので、俗に言うブラックウォーターになることもあります。

1度水質が落ち着いてしまえば、水草の生長に必要な栄養素が多く、水草育成には効果的ですが、そのまま水槽にいれたら水槽内が黄色くなってしまい、なかなか水が透明にならならない、過剰な富栄養化がケイ藻類や苔の原因になったりするなど、初心者の方は手を焼くことがあります。(アマゾニアⅡは、この栄養過多の問題点を解決したものになっていますが、その分水草の生長はアマゾニアよりも若干劣ります。)アクアソイルアマゾニアを使う場合は、水槽サイズに対しろ過は充分かどうかを確認し、槽内への活性炭などの投入が効果的です。

大磯砂の水槽から急にアマゾニアなどに変更するとPHで7~7.5⇒PHは6.5ほどに下がりますので、熱帯魚などにはあまりいいものではありません。ですので、水槽内の水をポリタンクやバケツなどに溜めおきをしておいて、底砂交換後にその水を投入するなどして、PHの急激な変化を抑えるようにします。

底砂を専用スコップなどで取り除いて、アクアソイルを敷くときは、ソイルが水槽内で暴れないように気を付けて行います。ソイルを敷き詰めた後は、汲み置きした水をお皿などで受けながら、静かに水槽内に戻します。ソイル内に紛れ込んでいた木のかすなどが浮いて来たら、ネットなどですくうようにします。

その後静かにろ過を開始します。ソイルセット初期はアンモニアなどが検出されることもありますので、1週間程度は毎日1/3程の換水を行うようにします。換水を繰り返していくと、1~2週間で水はクリアになり、水質が安定します。

もともとADAアクアソイルは、水草水槽においても栄養分の多い土が使用できたらということで、土を粒状化し加熱することで崩れにくくしたものです。崩れにくくしたとは言え、天然黒土で、土であることには変わりはありません。ですので、かき混ぜるような掃除の仕方をすれば、粒子が崩れやすく水槽内が濁ってしまいます。ソイルの扱いについては極力かき混ぜない、いじらないが基本です。

アクアソイル登場前の底砂は大磯砂が主流でクリーナーなどでしっかり掃除することができ、繰り返し使用することができました。しかし、アクアソイルは、基本的には掃除は行わず、半年から1年で効果が薄れてきますので、その段階で使い捨てるようになります。「プロホース」などを使って軽く掃除したい場合は、粒を崩さないように、充分な注意が必要となります。

(3)水質に影響を与えない底砂

ガラスやプラスチックなどでできた人工砂

自然には存在しない底砂ですが、色とりどりの美しい人工砂も古くから使われています。ビー玉などもグラスキャットなど楽しい底床にはなりますが、過能力は高くはありません。

焼成セラミック、石英系の底砂など

水質に影響を与えないの代表的なものには、焼成セラミック底砂や、石英系の底砂などがあります。焼成セラミックの底砂は、天然の石を高温殺菌することで有害な微生物などを排除したものです。微塵の付着したものは、pHを酸性に傾けることもあるのですが、水槽用に販売されているものは、硝酸や塩酸を使用して砂利に含まれる硬度物質を溶解処理したものですので、pHへの影響はほとんどありません。素材によっていろいろな色が選べます。

気を付けなければならないのは、セラミック系の砂は、石を砕いて作られたものなので、先がとがっていることが多いため、指に傷をつくってしまうこともあることです。底砂をあさるようなコリドラスなどには不向きですし、取り扱いには注意が必要です。水に溶けない石英(SiO2)を原料とした底砂も、水質に変化を与えることはありません。

さらに、大磯砂についても、食酢などに1日漬け置きすれば(酸処理)、炭酸カルシウムをくことができ、水質に影響しなくなります。管理面の行いやすさから見れば、最初はこれらの水質に影響を与えないものを選択しておくのが賢明と言えます。もし、弱アルカリ性を好む魚を飼育していて、あまりに酸性に傾く場合は、ろ過を確認しながら、大磯砂や珊瑚や貝殻を含んだ底砂を入れるようにするのもいいと思います。

珊瑚砂などをあまり入れ過ぎてしまうと、アルカリ性に傾き過ぎてしまう場合がありますので、注意が必要です。ソイルの使用は、まさに少し前までは、アマゾン川の水域で泳いでいたというような現地採取種を飼育する場合には適しています。しかし、品種改良によるブリード種には、特に水質を酸性に傾けなくとも、水質の適応性の幅の広い種類も多くあります。

とりあえずは、水質に影響しない底床を作っておいて、どうしても、もう少し弱酸性に傾けたいという場合は、そのときにソイルを加えたり、底砂の1部をソイルと交換したりするようにすればいいと言えます。

このように水質に影響を与えないものを選択しておくことによって、pHの上下についても、KH・GHについても、状況に応じて調整することができますので、失敗を少なくすることができます。

底砂を敷かないで飼育する魚

通常熱帯魚は、底砂があることで落ち着きますし、底砂は、ろ過バクテリアの繁殖場所にもなります。できれば底砂は入れてあげたほうがいいと思います。しかし、熱帯魚ショップなどに行くと、何も入っていないむき出しの水槽が置かれていることがあります。このように水槽内に底砂を敷かないで飼育する方法をベアタンク方式と言います。

ベアタンクは、ディスカス、アロワナ、その他の大型肉食魚、エンゼルフィッシュ、稚魚、プレコなどの水槽で使われていることが多いようです。ベアタンクにする理由としては、掃除がしやすく、水換えがしやすいことにあります。

ディスカスは、水質に対し非常にデリケートな熱帯魚で、水質を変化させないようにする必要があります。底砂の中にハンバーグの残りが入り込んで、腐敗したりすることは、小まめな掃除によって、避けなければなりません。特にブリードを目的にした水槽では、ディスカスは、水質の微妙な変化にも敏感になっています。

また、ベアタンクならば、稚魚のブラインシュリンプの食べ残し具合いもすぐに分かるという利点もあります。プレコについては、フンの量が多いので、掃除するのに便利なことから、ベアタンクにしている場合もあります。ベアタンクでは、底砂などの助けを借りることが出来ないので、大型の外部フィルターを使うなど、十分な能力を持ったろ過システムが不可欠になります。

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