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塩水浴

塩水浴で治療する

淡水魚の病気の治療には塩水浴による方法が採られる場合が多くあります。そこで塩水浴の意味について考えてみたいと思います。

●塩水浴の方法

塩水浴は、一般に0.5%の濃さの塩水に熱帯魚を1週間くらい入れる方法で行われます。比較的早期に見つけた白点病などの場合は、翌日には、白点がきれいに落ち始め、3~4日できれいになる場合も多くありますが、白点虫がすべて死滅するまで、念のため1週間くらいは様子を見るようにしましょう。

●なぜ、塩水浴なのか?

水を通す皮膚のような薄い膜を隔てて、濃度の濃い溶液と薄い溶液があった場合、水は濃度を同じにしようと、塩分濃度の薄い方から濃い方へと移動します。この働きを浸透圧と言います。

この原理に従えば、魚の皮膚も同じで、体の水分濃度が0.8~0.9%の魚が、それよりも薄い濃度の淡水に囲まれていたら、本来は淡水の水は皮膚を透過して、魚の体内の塩分を薄めようとする方向に働くはずです。しかし、これでは、淡水魚の体は、水を取り入れて水膨れにならずなってしまいます。そうならないように、淡水魚の体は、常に体内が同じ塩分濃度で保てるように、体内の水を逃してやることのできるシステムになっています。

逆に海水魚の場合は、周囲の塩分濃度のほうが高いため、塩分濃度を魚の体の内外で同じにしようと浸透圧が働くため、魚の皮膚を通して、魚体内の水分が外へ出て行ってしまうはずですが、海水魚の体は、常に体内が同じ塩分濃度で保てるように、塩分を逃し、水分を取り入れられるように働くようになっています。

ところが、寄生虫や微生物の体には、このような浸透圧に対し、魚のように調整システムが働かないので、塩水に浸けると、寄生虫や微生物の細胞から水分が奪われてしまい、死滅してしまうことになります。

塩水浴は、このように浸透圧の原理を利用した治療に意味があるのです。

●水温を上げることの意味

このような浸透圧の力は、温度が高くなるほど、働くようになるとされています。ですので、温度が高くなればなおのこと、寄生虫の体には、塩水が入り込むことになり、寄生虫の破壊は早まることになります。

28~30℃に水温を上げて、治療するのはこのためですが、水温を上げることの意味は、浸透圧と温度の関係以外にも、寄生虫 や細菌の繁殖条件との関係もあります。

白点病の原因であるイクチオフチリウス(和名はウオノカイセンチュウ)は25℃以下の水温で繁殖が盛んになると言われています。

また、穴あき病の原因菌サルモニシダは20℃程度の低水温を好むとされています。

このように、寄生虫や細菌によっては、水温を上げるだけでも、生息や繁殖が難しくなるものもあり、水温を上げることについての効果は大きいとされています。

●白点病の治療に用いられる塩

以上が、淡水魚の治療に塩水浴を用いる理由です。

塩には、岩塩、海塩、食卓塩があります。塩水浴に用いるのにいいとされる塩にどれがいいのかについては争いがあります。

岩塩は、ゆっくり溶けるという利点はありますが、ナトリウム以外の不純物も含まれている場合も多くあるとされています。天日塩をはじめとする海塩は、多くのミネラルが含まれますが、衛生上の問題で細菌類も含まれていることもあるとされています。家庭での食卓塩(塩化ナトリウム)は衛生上の問題はありませんが、ミネラルの含有がないと言われれています。食卓塩でミネラル入りのものもあるようですが、その場合は、魚に与えるものとしてはミネラル分が多過ぎるとする意見もあります。

一般的には、ミネラルを含む塩がいいとする意見が多いようです。しかし、寄生虫や細菌に浸透圧の調整が利かないことを利用した治療であるという目的で言えば、普通の食塩(塩化ナトリウム)で十分だと思います。実際に魚用の薬剤で使われる塩も、塩化ナトリウムだけで、ミネラルが含まれたりすることはありません。

いろいろな会社がいろいろな塩を売りたいことで、あれがいい、これがいいという話になってしまいますが、あまり惑わされないようにしましょう。

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